英検1級受験当日の話

それは2度目の挑戦だった。その日は比治山大学で受験をした。広島駅でJRを降り、調べてあったバス停で待っていても、バスがいっこうに来ない。時間に余裕はあったが、焦りたくないのでタクシーに乗った。タクシーの運転手さんに行き先を告げると、「今日はなんかあるんかねえ?」と聞かれたので、「英語の検定試験です」と答えると、「学生さんも大変じゃねえ」と言われ、(ププ・・学生・・・)久々に学生気分に戻り、意気揚々と試験会場へ向かった。

教室に入って、鉛筆よし、消しゴムよし、と確認して試験開始を待った。

練習テストでは、時間ギリギリに終わっていたので、数秒も無駄にすることはできない。「はじめ」の合図とともに問題用紙をめくる。

問題を解いていき、意外にも終了20分前に全てを解き終えた。最初から最後まで見直しをした後気付いた・・・・「2ページまるまるまだ手を付けていない!」震える手でページをめくると、日本語から英語への訳と、英語から日本語への訳が残っていた。またまた震える手で、手がつりそうになりながら大急ぎで2ページの訳をした。書き終わると同時に、「終了」の合図があった。終わってからもまだ手がつりそうだった。

あんなに練習テストをしたのに、当日になって2ページ分をすっかり忘れてしまうとは夢にも思わなかった。その後リスニングテストを終え、疲れた体を引きずってバスとJRに揺られて帰った。

一ヶ月後、すっかり諦めていた結果が届いた。意外にも合格だった。例の訳部分は英文・日本文とも10点中7点で悪くなかった。「人間残り7分で何でもできるんだ」と思った瞬間だった。